建築科に「照明学」を取り入れるべき
一般的に、一級建築士といえば、照明は分かっていて当然と思われがちですが、実はそうではありません。建築士の資格取得の際に照明は、設備のカテゴリーで学びます。要するに電気設備の一つなのです。しかも、平均照度計算で、JIS推奨の水平面照度を基準として、明るさが足りているかどうかを検討します。ですから、「器具だらけ」となってしまう訳です。
住宅に限らず床面積の大きな建物ともなれば、器具の意匠は建築設計で決め込みますが「明るさ」は設備設計事務所にお任せになってしまいます。またしても器具だらけ...。
それ以外に、昼光採光率という数値があり、設計上、窓開口をどれくらい取らなければいけないかという法規上の光に関する項目はあるのですが、どちらかといえばその場合の光は開口部分の大きさ、位置や形状が全てです。生活する上で、照明をどのように使うのかということは、ほぼ習わないのです。
確かに、個人で照明知識を習得する方もおられますが、数十年前の北欧デザインやイタリアデザインの器具に傾倒してしまいがちです。本来、建築士はその空間で人がどういう行動や暮らし方をするのかを考え、その行為に最適な光環境を考えるべきです。しかし形状は、照度一辺倒で進められています。とても残念な事です。
世界トップクラスの建築家は、皆さん「光環境」ということを徹底的に考えて建築の意匠と共に計画しています。ここでいう光環境、或いは照明計画というのは、自然光+人工光で考えます。ですから、建築の構造や意匠で昼間は自然光を巧みに室内に取り入れ、夜間は人工光(照明器具)で光を確保します。
ほとんどの場合、水平面照度では考えません。極端な場合、住宅であればスタンド専用コンセントを配置して、器具は一切無い空間設計をする場合も多く見受けます。
少し、照明器具が普及する大正時代以前の建築物をご覧になってください。自然光と人工光が...。
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こちらの記事は当協会副会長 山中先生の「これからの住宅ライティング多様化するライフスタイルへの対応」の一部となります。照明を学んでいる方々へ向けての記事となります